永代供養を申し込む際に、家族が費用を支払うことがあります。たとえば、親の代わりに子どもが手続きを進める場合や、夫婦のどちらかがまとめて支払う場合です。そのとき、多くの方が気にするのが「この支払いに贈与税はかかるのだろうか?」という点です。
税金の扱いを理解しておかないと、あとから思わぬ指摘を受ける不安が残ります。しかし結論からいえば、永代供養料の多くは贈与税の課税対象にはなりません。宗教行為に対する対価であり、財産の譲渡とは性質が異なるためです。
この記事では、寺院での永代供養を数多く見届けてきた経験をもとに、贈与税がかからないケース・かかるケースの違いをわかりやすく整理します。名義や支払方法の工夫でトラブルを避けるポイントも紹介しますので、安心して供養を進めたい方は、ぜひ最後までお読みください。
永代供養の費用は原則として贈与税の対象にならない
税務上の考え方では、「対価性」がある支払いは贈与にあたりません。たとえば、法要・供養・管理など、明確な役務提供がある場合は非課税です。一方で、単なる資産の譲渡や金銭贈与とみなされる場合は課税対象となります。
領収書や契約書に「永代供養料」「管理料」など、支払い目的が明記されていれば安心です。法人の定める料金体系や期間が書かれていると、税務署にも説明しやすくなります。
家族が代わりに支払っても贈与税がかからないケースが多い

家族が支払った場合も、基本的には贈与税はかかりません。なぜなら、永代供養は家族として当然の範囲に含まれる「扶養義務」の一部と考えられるからです。
たとえば、親の永代供養を子どもが支払う、あるいは夫が妻のために支払う場合、それは「家族の生活維持のための支出」とみなされるケースが多いです。
税務上も、生活費や教育費、医療費など「通常必要な費用」は非課税です。供養料も同様に、社会通念上必要な範囲内であれば贈与税は課されません。
家族で負担する際は、領収書に支払者・施主・供養対象者の関係を明記しておくと安心です。また、金銭のやり取りをメモやLINEで記録しておくと、将来的なトラブル防止になります。
親の永代供養を子どもが支払う場合は「扶養の範囲」として非課税
子どもが親の永代供養を支払う場合、一般的には贈与税は発生しません。税法上、親子間には「扶養義務」があります。生活費や供養など、社会的に必要と認められる範囲の支払いは非課税です。
ただし、豪華な施設や高額な供養プランを契約し、明らかに資産的価値を伴う場合には注意が必要です。実質的に「財産を移転した」とみなされる恐れがあるため、契約内容と金額の妥当性を確認しましょう。
夫婦間での支払いも、生活費や扶養費の一部として扱われ非課税
夫婦間の永代供養費用も、非課税とされるのが一般的です。共通の家計から支払う場合、生活費の一部として整理されます。また、一方が立て替えても後日精算する意図があれば、贈与とはみなされません。
税務上のトラブルを避けるためには、領収書の宛名を夫婦のいずれかに統一し、支払い目的を「永代供養料」と明確にしておくことが大切です。
贈与税がかかるのは「形式的な名義貸し」や「高額な資産移転」の場合
一方で、例外的に贈与税の対象となるケースも存在します。それは、永代供養の名目を利用して実質的な財産移転を行っていると判断される場合です。
たとえば、他人名義で契約を結び、支払者が異なるケースです。契約上の名義人に権利が移るような内容(納骨堂の占有権・区画権など)があると、贈与とみなされる可能性があります。
また、供養料の名目で高額な支払いを行い、実際には墓地や不動産の一部権利を得ているような場合も課税対象です。
下表は、贈与税がかかるケースとかからないケースをまとめた比較表です。
| 判断項目 | 贈与税がかからない場合 | 贈与税がかかる場合 | 
| 支払目的 | 宗教行為の対価(供養料) | 財産移転(権利・土地) | 
| 名義 | 供養される本人または施主 | 他人名義で契約・支払いが別人 | 
| 金額 | 寺院の相場に沿う水準 | 相場を超える高額支出 | 
| 権利関係 | 財産権なし(管理料のみ) | 墓地・区画権付き | 
| 税務判断 | 非課税扱い | 贈与税課税の可能性あり | 
本人ではなく他人名義で永代供養を契約し、支払者が異なる場合
契約名義人と支払者が異なり、支払いが返済されない場合、贈与と判断されることがあります。とくに、親戚や知人など第三者間で発生する支払いは慎重な取り扱いが必要です。
契約書には、支払いの理由や目的を明記し、トラブル防止に努めましょう。寺院側に事情を説明しておくと、後から証明しやすくなります。
供養料に加えて墓地・納骨堂の権利を購入する場合は課税対象になる可能性
永代供養の契約に財産的権利が含まれている場合は、課税対象になる可能性があります。たとえば、「永代使用権付き納骨堂」「区画指定墓所」などは、実質的に財産価値が発生します。
その場合は、墓地や土地に関する契約と供養契約を分けることで、税務上の明確化が可能です。税理士に相談し、契約形態を整えることをおすすめします。
非課税にするためのポイントは「名義」「支払者」「目的」の一致
贈与税を避けるために意識すべきは、名義・支払者・目的の3点です。この3つが一致していれば、税務上の誤解を招くことはほとんどありません。
契約名義は供養される本人または施主名で統一する
契約名義を統一することは、最も基本的な対策です。供養される本人、または喪主や施主が名義人となるよう整えましょう。家族代表として支払う場合は、その旨を契約書やメモに残すと確実です。
支払い目的を「供養目的の支出」と明記しておく
領収書や契約書に、支払いの目的を明記しておくことで、贈与税の対象外であることを明確にできます。宗教行為に対する支払いであることが示されていれば、税務署の解釈もスムーズです。

永代供養の費用は相続税の控除対象にならない場合が多い
永代供養料は、原則として相続税の控除対象となる葬式費用には含まれません。永代供養は、埋葬方法の一つであり、葬儀と直接関わる費用とはみなされないためです。
ただし、生前に本人が永代供養料を支払っていれば、その費用は相続財産自体に含まれず、結果として相続税の負担を軽減できます。故人が亡くなった後に遺族が支払った場合、原則として相続財産から控除することはできません。節税効果を得られるケースもあるため、領収書を保管しておくと良いでしょう。
まとめ:永代供養の支払いは原則非課税、ただし名義と金額に注意
永代供養の費用は、ほとんどのケースで贈与税の対象にはなりません。宗教行為への対価であり、社会通念上必要な支出とみなされるためです。
ただし、契約名義や金額が不自然であったり、財産権が含まれていたりする場合には注意が必要です。契約書や領収書に目的を明記し、家族間の支払いであれば扶養の範囲内に整理しておきましょう。
安心して永代供養を進めるために、支払い時の記録を残し、疑問があれば税理士や寺院へ早めに相談してください。永代供養は、故人を想う大切な行為です。形式や税金にとらわれすぎず、心を込めて準備を整えましょう。
なお、この記事で解説している税務上の取り扱いは、一般的な情報提供を目的としています。個別の契約内容や状況、今後の税制改正によって適用が変わる可能性があります。必ずご自身の責任において税理士や専門家に相談し、最終的な判断を行ってください。

  
  
  
  
    